ハンナ・アレント ジェローム・コーン編 高橋勇夫訳 筑摩書房 2008.1.10
序文 ジェローム・コーン
緒言 『思索日記』1951年9月より
第一章 ソクラテス
1 哲学の始まりと政治の終わり
2 ソクラテスの説得術
プラトンの懐疑
プラトンによる転倒
善の理念
哲学者VS.ポリス
真理VS.意見
ソクラテスの問答法
友情と公共世界
一者にして二者
自分自身との共生と倫理学の起源
変幻自在なもうひとりの自己と世界の変化
思考と行動
思考と言論
善き人
孤独と良心
ソクラテスによるドクサの破壊
哲学の敗北と政治からの撤退
魂と身体の衝突
* * *
プラトンの洞窟の寓話
哲学の起源
驚きと言葉の喪失
根源的な問い
哲学的衝撃
共通世界からの疎外
驚愕の延長と複数性の喪失
哲学の有用化
複数性と新しい政治哲学へ
第二章 政治思想の伝統
伝統の終焉
共通感覚の衰退
近代的歴史意識
伝統による「偉大な経験」の排除
創建と家庭--ローマ的経験
ローマの創建--宗教・権威・伝統の三位一体
ローマ精神の持続--カトリック教会の創建
支配の概念の起源
ギリシア哲学の受容
伝統と哲学
観照的生活と活動的生活
人間的活動の不確実性
赦し
赦しと新しい始まり
始める能力
人間の複数性
差異と平等
第三章 モンテスキューによる伝統の修正
本性の非活動性
活動を鼓舞する原理
平等と卓越
恐怖、無力、孤立
第四章 ヘーゲルからマルクスへ
1 世界史観
絶対的なるもの
2 転倒
遠近法的思考
方法としての弁証法
伝統の切断と過程的思考
歴史の狡知
無階級社会と官僚制
人間の新しい定義
労働する動物
第五章 伝統の終焉
1 必要悪としての政治
独自の起源を持たない政治
労働と哲学の派生物としての政治
政治に対する軽蔑
孤立=観照=哲学と共生=実践=政治の分離
ヘーゲル哲学の継続
2 経験に先立つ支配の概念
法の無効化--マルクスの国家概念
統治概念の台頭
マルクスの四つの統治形態
古代的支配様式の持続
思考の媒体としての活動
第六章 政治入門
1
政治とは何か?
複数性
差異
政治
歴史と自由
政治の任務
2
政治に対する偏見と現代における政治の実相
偏見
恐怖と希望
偏見の根深さ
偏見と判断
社会的判断における偏見の役割
偏見に潜む過去の判断
標準に基づく判断と標準を持たない判断
危機の到来と偏見のイデオロギー化
判断能力
今日の不安の種--人間
世界に対する気遣い
政治は何を意味しているか?
政治がもたらす災厄
全体主義と原子爆弾
政治の無意味化
無限の不可能事--奇跡--新しい始まり
自由という奇跡を起こす能力--活動
政治の意味
ポリス
政治の正当化
アリストテレスの「政治的動物」
ポリスの自由
平等と言論の自由
自由と政治的空間
近代的歴史意識と自由
家庭(=生活)と自由
公的空間と政治
ホメロス敵経験とポリスの創建
活動から言語へのシフト
「自由であること」と「何かを新しく始めること」
活動の自由と他者たちの存在
互いに語り合う自由
政治的空間
少数者の自由--プラトンのアカディメイア
政治に対する無関心
政治の地位の低下
初期キリスト教による政治の拒絶と再定義
初期キリスト教の政治からの自由
隔離と善の本性
アウグスティヌスによる政治の再解釈
公的空間としての教会
社会の出現
目的としての自由、手段としての政治
政治は自由のためにあるのか、生活=生命(ライフ)のためにあるのか
暴力の怪物化
近代世界--「必要」の台頭
国家による暴力の独占
暴力と権力の結合
偏見から判断へ
恐怖に基づく政治不信
戦争の問題
破壊のクライマックス
生産と破壊の均衡
自然的領域内の破壊
超自然的エネルギー--原子爆弾の発見
絶滅戦争の恐怖
全面戦争の現実化
限界を踏み越えた暴力
全体主義の台頭と破壊される関係性の世界(=政治的な世界)
トロイア戦争--絶滅戦争の原型
ホメロスの公平性
ポリスにおける戦争の非政治性
闘技精神と「現れ」
言論による多数の視点の出現
政治的人間の自由
平等なる他者の存在と人間と人間の間の空間の存在
家庭--自由の欠如
ポリスにおける闘争のゆくえ
敗者の大儀--ローマ的政治の起源
世界は複数の観点が存在するときに限り出現する
敵対的出遭いから人間的出遭いへ--徹底的な絶滅から持続的な何ものかへ
条約と同盟
持続するつながり--ローマの法概念
境界を定める--ギリシアの法概念
王としての法--ポリスの法概念
戦争と外交--ローマ的政治原理
赦しと条約--ローマの拡大
ギリシアの法(ノモス)--ローマの法(レックス)
ローマ中心主義
ローマによる「世界」の創始--間の空間の政治的問題化
絶滅戦争による中間地帯の破壊--政治の消失
政治はいまでも何らかの意味を有しているか?
戦争と革命
政治的活動における目標、暴力における目的
目的、目標、意味
活動の原理
問われ続ける政治
政治の意味
目標としての平和
戦争の狭間の平和
エピローグ
砂漠(=無世界性)の拡大
順応への誘惑--全体主義と心理学
オアシス
現実逃避
世界への愛